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ポケダン(探検隊)チーム『シノギリハ』・『マシュマロ』・『ひだまり』・『カクテル』のネタを殴り書くそんなブログ。
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 青い空が厚い雲に覆われ日も強く差し込まなかったあの日。

 私は、“奴”と出会った。



 *****
 灰色の空。
 薄暗い裏路地。
 地面にはちらほらと男が倒れ、私自身もボロボロな状態で。
 私は何をしていただろうか?

 確か……私は足りなくなった文具を買い揃えに行きつけの文具店を訪れていた。
 必要なものは手に入ったから屋敷に戻ろうとしていたが、店を出てすぐの通りで女性が軟派な男達にカラまれていて。
 彼女を助けようとして間に立ち、少し口論はあったものの、リーダー格の男が「場所を変えて穏便に話をしよう」と提案し、移動。
 この裏路地に到着するや否やリーダー格の男はいきなり殴りかかってきた。どうやら相手は最初から話し合いなんてするつもりがなかったようで。
 リーダー格の男に続いて他の男達も私を殴る蹴る、それを受け流したり返り討ちにして2~3人は気絶させるも、着実にこちらは疲労の色が出始めて……一人がナイフを取り出して背中を切りつけてきて。
 限界になってきた所で私は剣を抜き、軽く脅して残りの男達は怯んで退散。
 静かになった所で、私は片膝をつき荒い呼吸を繰り返す。胸に手を当てれば鼓動は早く、玉の汗が額に浮かんでいた。背中を主として己の身体にジクジクと痛みを伝えていく。
 痛みと疲労に思考は持っていかれたからだろう。私は反応出来なかった。

 倒れ伏していた男が身を起こし、私にナイフを向け走ってきたことに。

 ガスッという鈍い音が辺りに響く。
 視界が霞む。意識は現実から離れていく。
 しかし、何故だろう。

 鈍い音がしたのに、新たな痛みに襲われることは、なかった。





「――はい…住所は……はい、はい。お願いします」
 霞み、暗転した視界が元に戻ると、視界には灰色の空でなく白い天井が広がっていた。
 自分の身体を包む感触もアスファルトのような硬いものでなく、少し柔らかい。視界の一部に棚や勉強机があり、誰かの部屋であることは明らかである。私が寝ているのも、ベッドといった寝具か。
 声の感じからすると男だろうか、低い声が己の鼓膜に届く。声が聞こえた方に顔を向ければ、金髪が一人、私に背を向ける形で携帯電話と手に話している。
「お、目ぇ覚ましたか。大丈夫か?」
 ピッという音と共に通話を切ると、私に気付いたのだろうか、こちらに顔を向けてきた。
 一部だけ赤という金髪に、鋭さのある赤の瞳。顔立ちは……私にはよく判らないが、これは整っているというのだろうか。まぁ、見れない顔ではない……と思う。
「……貴様は……うぅっ」
 上体を起こそうとするが、痛みが走り、ボスンとベッドに身を沈める。
「おいおい、ケガしてるんだから無理するなよ。今電話したから、保護者の迎えが来るまではジッとしてな。起きたいなら手伝うから」
「ぐ……」
 自分の力だけでどうにかしたかったが、どうにも出来ず、仕方なく彼に上体を起こすのを手伝ってもらい、一息つく。
「で、貴様は誰だ? 此処は何処だ? どうして私は此処にいる?」
「いや、混乱するのは解るが、いっぺんに質問するのはよしてくれ。処理が追いつかねぇ」
 そう言って男は手を前に出し、制す。
「俺は槐、龍宮槐。立場としては大学生だ。此処は俺が住んでるアパートの一室で、アンタが怪我していたし、手当てをするために此処に連れてきたわけよ」
 「……貴様、処理が追いつかないという割には私の質問に全て回答してないか?」と思ったのは内緒である。
 ふと、己の服装に違和感を覚えた。
 視線を見下ろせば私は先程まで来ていたシャツでなく、落ち着いた色合いの、男物の浴衣を身に纏っている。少し手を滑らせ、直に肩を触ると包帯なのか、布の感触を得た。
 ――ん?
「………………」
 嫌な汗が身を伝う。身が震えを訴える。
「どうした?」
 男改め槐は、私の表情に対し首を傾げようとするが、それよりも先に私の咆哮が轟いた。
「……貴っっっ様ぁああああぁあぁぁぁっ!!!」
 緑を基調とした両手剣が生み出され、刃を槐に振り下ろす。突然のことで相手は混乱しているが、最小限の動きで刃を回避している。
「貴様、い、いくら手当てを要するとはいえっ 女子の服を、ぬ……脱がすとはっ! この、このっ」
「ちょ、確かに手当てをするにあたって裾をまくるとかはしたけどっ 重要な部分は管理人さん(女性)に頼んでやってもらったから! 頼む借家だからあんまり刃傷沙汰起こさないでっ てか元気だなお前!!」
「うっさい、今すぐに斬――」
 もう一度剣を振ろうとした時、チャイムが鳴る。
「すみません、お嬢様をお迎えにあがりました」
 扉越しに聴こえる声は、私が知っている声。ガチャリと扉を開けると執事長が姿を現した。
「あ、わざわざスミマセン。この通り多少怪我を負ってますが、お嬢様とやらは無事です」
「それはそれは。お嬢様、屋敷に戻りましょう。」
「あ……あぁ」
 ご丁寧に購入した文具と私が着ていた服(切れた場所の縫製済)を一まとめに収納された紙袋を片手に、私は執事長の車に乗ってその場を後にすることとなった。


「まったく……何なんだアイツはっ」
「恩人に対しアイツと呼ぶのはいかがかと思いますよお嬢様」
「ぐ……」
 執事長の一言に私は黙り込む。
「それにしても……この浴衣はアイツの私物だろうか。今度返しに行かねばならないな」
 浴衣の袖を少しつまんで私が呟くと、執事長は私に言う。
「それならば大学で会った時に返せばよろしいでしょう」
「は? 何故大学……」
「あの方、お嬢様と同じ大学に通っておりますよ」
「は?!」
「しかも貴方の先輩です ご丁寧に大学名と学年まで言って下さりましたから」
「はぁっ??!」

 執事長の言うとおり、後日大学で本当に遭遇し、浴衣を返却する事が出来たのだった。


  おわり
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1990/03/09
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色々
自己紹介:
幼い頃からの任●堂っ子。
闇の探検隊をプレイ中。
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