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ポケダン(探検隊)チーム『シノギリハ』・『マシュマロ』・『ひだまり』・『カクテル』のネタを殴り書くそんなブログ。
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 廃棄宣言がされた時の独白・行動



 *****
「廃棄宣言ですか」
 理由を考えれば納得出来ることでしょう。
 [危険なもの]が完成し、それを利用する際、作り上げる研究の一部を担った研究者というものは邪魔にしかならないですものね。
 にしても物流まで断つなんて……食材や保存食を消費し過ぎなくて良かったです。
「完成した時点で考えられる事でしたけど、本当にやるとは粋も何もありませんね……」
 私、頭では納得はしていても心では納得出来ておりませんのよ?


「――廃棄宣言か」
 [危険なもの]が完成したという報告の時点で、予想が出来ていた。
 同時に、こうあって欲しくはないとも、思っていた。
 今自分がいる場所は、資料室の一角。各研究者が提出した論文が保管されていることを願って彷徨っている。
 一度立ち止まり、目を閉じれば己が護らねばならない人達の姿が脳裏を過ぎっていく。
 拾われた恩を返すためにも、俺はあの人達の日常を護る権利と義務がある。
「僅かな可能性に、賭けさせてもらうぞ」
 あの人達の日常を壊すものは、可能な限りで壊してやる。
 刺し違えても。


「廃棄、宣言……?!」
 飲みかけの缶ビールが手元から滑りそうになり、慌てて持ち直す。
 持ち直しても、その手が震えている事は理解出来た。
「そんな……」
 ポタポタ、と雫が零れる。
 晶、湊、道重、見里、長船――…
 ごめんね、ごめんね、ごめんね……っ!
 込み上げるものは、謝罪と罪悪感と、それから。


「……廃棄宣言ねぇ……」
 ベッドに寝転がりながら、オレはぼやく。
 まぁ、予想は出来てた事だよな。
 目的のブツが出来ればその過程の一端を担った研究者は用済み。
「ま、オレにゃ関係ないことか……」
 そう言って、天井を仰ぐ。
 左手にあるのは叔父が遺した薬学の資料。
「は……」
 なぁ、叔父さん。今のオレを見てアンタは何を思う?
 アンタが愛した薬学を、このような形で利用される事になって。悔しいよな?
「くそ……っ」
 握る拳からは、僅かに血液が流れていた。


「廃棄宣言か……」
 残っていた布を繕いながら、あたしは呟く。
 傍らの家族は、いつもと同じ表情であたしを見ていた。
「お父さん達に手紙が送れなくなっちゃったね」
 手紙が来なくなったら、心配するかな? そう言ってあたしは彼女の頬を撫でる。
 残された布で作るのは、人形。
 今、この施設にいる人達を象った人形。個体差はあれど、皆笑顔を浮かべている。
「ひょっとしたら、死んじゃうかもしれないからね……」
 だから、あたしはあたしの思い出を作らせてもらうよ。どんな決着になるのであれ、さ。
 未練を残すのは、嫌なんだよね。


「廃棄宣言……」
 呆然すると言うのは、こういうことなのかな?
 何度もここから逃げようとした、出来なかった。
 仮に逃げ出せたとしても、わたしはどこに行けばいいんだろう。
 思わず膝をついた。ポタポタと涙が落ちていく。
「たすけて……」
 そう呟いても、わたしを助けてくれるヒーローなんていない。
 そんなことはもう、わかっていたけど。


「廃棄宣言……?」
 滑らしていた筆を止めて、私は天を仰ぐ。
 [危険なもの]を完成した以上、この場所も必要無い。
 [危険なもの]には興味は無かったが、この場所をなくすのには若干の嫌悪を覚えた。
 手元と、周囲を見やる。
 あるのは書きかけの手紙と、手紙だった残骸。
 納得のいく手紙が書けなくて、何度も捨てていた。
「……結局、手紙が出せぬままになってしまったな……」
 すまない、晃司。
 すまない、愛瑚。
 多分、私の人生は此処を墓場にして終わるのかもしれない。
「だから今、この場で願わせてもらおう」
 ――私の分まで、幸せになれ。


「廃棄宣言かぁー…」
 あーあ、結局色彩心理の研究とか出来ないままだったなー。
 被験者としての生活も結構面白かったけどね。
 ベッドに座り込んで、手近にあったぬいぐるみを抱きしめる。
「結局、管理者さんは何色の思いで[危険なもの]なんてものを作ったんだろう……?」
 気になるなー。
 気になるなー。


「廃棄宣言か」
 そう私が呟くと、更科は私を見つめる。
 その表情、その声色。おそらくは心配の意思を見せているのだろう。
 私は更科の頭をポンと叩く。
「私には、関係の無い事だ。お前が気にかけたいのならば、好きにするが良い。」
 その一言を告げると、更科は一礼した後、何処かへ飛んでいった。
 その様子を、視界の端で捉えたら、その後私は目を閉じる。
 ――そう、私には関係の無い事だ。
 いかなる欲望も、感情も、理屈の上でしか理解していない。
 正直、今もこの状況下でどのような感情が抱かれるのか。私には理解出来ない。
 既に時代は次の者達に託した。
 古き者達は、もう退場するべきであろう。
「辻原家と、峠崎家」
 新たな者達に託した後、どういう流れになるのやら。

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 物語は、動き出す。
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1990/03/09
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色々
自己紹介:
幼い頃からの任●堂っ子。
闇の探検隊をプレイ中。
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