時の彼方へ立ち向かえ・中文 2008/06/01_Sun_17:43

くどいですが、続きからどうぞ。
うちの主人公に多分ジュプ主は適応されない。

　それから一週間して、チンメイとジュプトルとは親しい間柄となった。
　ヨノワールとジュプトルはやや険悪な雰囲気をにおわせる時があるが…、チンメイ曰く『ケンカするほど仲が良い』という話があるから、私は彼等のケンカとやらを見守る事にする。
　チンメイは私に色々な事を教えてくれた。
　ヨノワールが私に教えてくれた事とは違う『知識』を。
　そして、自身の生い立ちの事を。
「私ね、ずっとアンタに会うのを楽しみにしていたんだよ。」
　ある日彼女は私にそう言った。
「小さい頃からの夢だったんだ、伝説系のポケモン皆と友達になる事が。」
『トモ、ダチ…？』
「そう、友達。　……ディアルガは？ディアルガには友達はいないの？」
『そうだな………。』
　私は考える。
　チンメイは私の答えを楽しみにしているのか、笑顔で此方を窺い見る。
『いない』
　自分の口から出た答えは、何と冷たい事か。
　チンメイはその答えにきょとんとした表情をあらわにしている。
「グォイ…ヨノワールは違うの？」
『――奴は母の代から仕えてくれている、……主従関係で、恐らくお前が考える友達とは違うだろう。　他のポケモンもほとんど主従のようなものだ。　昔から文を通しての付き合いをしくれているパルキアもいるが、そいつもまた「友達」とは…違う気がする。』
「そっかぁ……………。」
　チンメイは軽く俯いてしょんぼりとうなだれる。
　「ん？待てよ？？」しかし彼女は、そう呟くとすぐに明るい表情に戻って、私を見た。
「――じゃぁ、私が友達になったら…ディアルガの初めての友達になるんだねっ！！」
　私に対して、その明るい満面の笑みを浮かべたままで。
　確かに、そう言った。
『………』
　不思議な感情が、私の中を占め始める。
　今まで得た事のない、温かな、そして

　幸せと感じられる、何か。

「？　どうしたの、ディアルガ。　おーい、聞いて」
『クロノスだ。』
「？？」
　突然の言い回しに、チンメイは首を傾げる。
『ポケモンには…種族名と、実名がある。　お前のパートナーにジュプトルと、ケイビと言う二つの名があるように　私にも、種族としての名だけでなく、個別化した名がある。』
　それが、『クロノス』。
　時を司る我が種に対する皮肉ともとれる、時の神の名。
　しばらくチンメイはキョトンとした表情で私を見つめる。
「『クロノス』かぁ………綺麗な名前じゃん、何で今までそう名乗らなかったの？」
　私の名を聞いても、彼女は動じない。
　明らかに皮肉の籠められたこの名を、『綺麗』と、確かにそう言った。
『…………………。』
　私は黙る。
　そして身体は、ある場所へ歩みだした。
　私の行動に「どうしたの？」と尋ねるチンメイに
『お前に見せたい…違うな、「見せなければならない」場所がある。　ついて…来て欲しい……』
　ただ、そう言って。ゆったりを目的地を目指しだす。



　クスクス

　――何処からか笑い声がする。

　クスクス
　クスクス、クス…
『凄いよ、「お母さん」。　あのポケモンの中、闇が眠ってるよ。』
　何て心地の良い闇なんだと、蒼の隻眼をしたポケモンの視線は一つの存在を定める。
　その視界に映るのは、チンメイの前を歩いてある目的地へ向かうディアルガ、ことクロノスの姿。
　ニンマリとした表情で彼を眺めていたこの存在は、恍惚として、両手で頬を挟んでいる。
『時間を司る神サマかぁ…ボクの話を、聞いてくれると良いなぁ……！』
　クスクス、クスクス
　また、笑い出す。
　この世でただ一匹しかいない、時の神を見定める目つきで。
　そのポケモンはただ見下ろしていた。