忍者ブログ
ポケダン(探検隊)チーム『シノギリハ』・『マシュマロ』・『ひだまり』・『カクテル』のネタを殴り書くそんなブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

龍宮、告白する



 *****
 ――ギシ、ギシ……ッ

「あっ……ん、」
 薄暗さが目立つ空間の中、何かが軋む音と、女性の声。そして、グチュグチュと淫らな水音が己の鼓膜を刺激する。
「……は、ぁ……あっ あっ」
 女性の声には何処か艶があり、今ある悦楽の波に呑まれているのが伺える。

 ギシッ、ギシッ

 身体が熱い。
 肌には玉の汗が浮かび、頬を、腕を、伝っていく感触を覚える。
 脈動も凄まじい速さを訴え、湧き上がる本能のままに、野獣の如く貪っていった。

 “誰”が? ――“誰”を?

 ギッ、ギィッ、ギシ、ギシッ
「……っ も、ぁ……ッ」
 女性の声に、余裕は無い。
 薄暗い空間。その中でほのかに点る明かりが、僅かに情報を提供する。
 軋む音の正体はベッド。
 その上にあるはほのかな明かりに照らされた肌色。
 ベッドの上には金色の長髪が乱れて存在している。
「はぁ……っ あんっ も、ダメ……ッ」
 その金色には見覚えがある。
 そして、その“声”にも。
 女性の腕は自分の背に回される。
「お願い……っ」
 弱弱しくも、聞き取れる懇願の声。
 声の主が誰かというものは予想がついている。
 それは自分にとって家族のような存在で、己の残り全ての人生をかけてでも護るべき存在であって。
 そして、
「も、イッちゃう……! キて、“龍宮”……っ!!」
 大切な、俺の想い人。


「――って」


「んなことしてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 ……という自分の怒号が部屋の中で轟いた午前5時。
 不快は汗と共に、男・龍宮緑青は目を覚ました。
「……よかった、夢か……」
 今の今まで見ていたものが現実のものでなかったということに、龍宮は僅かながら安堵する。荒く乱れた呼吸を深呼吸で整えながら、彼は己の中に抑圧されてきた欲望を再認識した。
(夢の世界だったとはいえ、俺はお嬢に一体何をしてるんだっつの……)
 「夢は見ているものの深層心理を映し出す」とか、何処かの学者が言っていたが、
(……その理屈で言ったら俺ただの欲求不満者じゃねぇか! しかも……相手は一番“そう言う対象”に見てはならん存在だし!!)
 「良かった……防音がある程度保障されている寮で本当良かった……っ」とブツブツ呟きながら、乱れた浴衣を脱いで普段のシャツに袖を通す。
 そもそも、何故あのような夢を見たのだろうか?
 前のボタンを留めているうちに、……何となくその答えが判ったのか、龍宮はジロリと横目で“答え”を睨めつける。
 “答え”はスヤスヤと心地良さそうな寝息を立てながら、ベッドの上で今も現在進行形で夢の世界を彷徨っている。
 前髪の一部だけ色素の違う金髪は見苦しくない程度に乱れ、身体の一部は毛布にくるまっている。
 龍宮が護衛をするべき少女・紫黒撫子は、彼とは反対に良い夢でも見ているのだろうか、口元をほころばせながら今も眠りについている。
 彼女は昨夜、まるで当たり前のように“また”自分の部屋に遊びに来て、時間も時間だったので床に就こうとしたら、これまた当たり前のようにヒトのベッドに潜り込んでそのまま就寝し始め、そんな具合で(半ば強引に)泊り込まれたのである。
 先程の怒号に対し撫子は、眉間にシワを寄せることなく規則正しい寝息を立てながら眠り続けている。……長い事殴りこみの音とかを聞きながら眠りにつかなければならない状況が多かった彼女としては、この程度の音声は気にするほどのものでもないのだろう。
 龍宮は溜息を一つ吐き、彼女の傍に近づいた。
「お嬢、朝ですよ。起きてください、つーか此処貴方の部屋じゃないんですから、解ってますか?」
 そう言いながら彼、は撫子の身体を軽く揺する。
「ん、ぅ……ん……?」
 長いまつ毛がピクリと動き、ゆっくりと彼女は上体を起こす。その過程で浴衣がずれて淡い色をした下着や色白の肌が露出し、龍宮はバッと視線を逸らす。うっすらと開いた瞼からのぞく漆黒の瞳は、最初こそおぼろげな視界を彼女に見せていたが、時間の経過と共にそれは正確なものへと築かれていく。
「あら……龍宮、おはようございます」
 未だに眠気が取れないまま、彼女はぼんやりとした調子で彼に深々と礼をする。乱れた着衣については多分まだ気付いていないのだろう。着々と大人に近づいていっている彼女の肢体に対し、目のやり場に困った龍宮は依然彼女を視界の端にいれないように顔を背けながら、己の口元と鼻を、自分の右手で塞いだ。

挿絵

























「……おはようごぜぇます……。とりあえずお嬢……、その、浴衣が色々と乱れているのでちゃんと直しましょうね……?」
「? ……あら、ごめんなさい。今日はあまり寝相が宜しくなかったようですね」
 予想通り、彼女は龍宮に指摘されるまで己の姿を意識しておらず、意識が半分寝ぼけた状態のまま、浴衣の合わせを正し、身なりを整えていく。その様子に羞恥心で動揺するといったものは見られず、そのまま彼女は「顔洗ったら朝食の支度しますねー」と言い残して洗面所へ向かっていった。
 撫子がいない自室の中で龍宮は、自分のことを信頼してくれていることに喜びを覚えるべきか、それとも自分が異性として意識されてない事に落胆するべきか。二つの反する感情を複雑に渦巻かせる。
(……いや、お嬢の反応や態度の方が正しいんだよな)
 自分と彼女は、“護衛”と“護衛対象”。
 5年以上もの間、兄妹同然に育ってきたんだ。そう言う風に見る方がおかしいんだ。
(――やはり……“妹”のように接してきた“護衛対象”にこんな感情を抱くのは、間違い か……)
 自分が抱いているこの“感情”は、あってはならない“禁断”のものなんだ。
 そう、彼は自分の中で一方的に解決させた。

 根本的な解決として成立していないと、解りながらも。


  * * * *

「ほぉ……? なるほどねぇ……」
 昼間の図書室。
 研究論文をまとめている撫子に頼まれメモを片手に必要な資料を求め散策していた所、監視員・樹島と遭遇し、龍宮は相談に乗ってもらっていた。少なくとも彼は相談事を他人に喋ることはしないだろう、という信頼があったためである。……といっても、調査目的で図書室を訪れていた樹島が、物凄く暗いオーラを纏った状態で資料を探している龍宮を発見し、声をかけたのが事の発端なのだが。
 比較的人の通りが少ない片隅で、他人の迷惑にならないくらいの声量で龍宮はポツポツと溜め込んでいたものを吐き出す。
「……まさか、ね。あぁいう夢まで見てしまうくらいになってるって、相当末期だと思うわけですよ。着々と自分が異常性の道へ突き進んでしまってるのではないか、正直不安なんです……」
 「護衛するべき相手と交わる夢なんて一般的な護衛からしたら完全に狂気の沙汰でしょうからね」と付け加え、龍宮は苦笑する。そんな彼の話を、ただ樹島は聞いていた。
「――つーかよ」
「……何でしょうか?」
 暗い表情を浮かべて延々と自虐していた龍宮に対し、樹島は一言物申す。

「お前らって、付き合ってなかったのか?」

「ッ??!」
 その一言は龍宮からしたらとんでもない威力の爆撃投下に等しい衝撃で、思わず色々と叫んでしまいそうになったが……今現在自分達がいる場所が“騒がないようにしましょう”が暗黙の了解となっている図書室だという事を思い出し、両手で己の口を塞ぐ。一旦自分の気持ちを落ち着かせた所で、声量を抑えて龍宮は樹島に返しの言葉を述べた。
「い……いったい俺とお嬢の何処をどう見たら……っ その、こ、“恋人”の類に見えるんですか! よくて“護衛と護衛対象”もしくは“兄妹分”、最悪の形で“不審者と少女”でしょうが!!」
「……お前、それ自分で言ってて悲しくならないか……?」
「なります。 ――が、もう慣れました」
 龍宮の言葉に樹島は哀れみの視線を向けたのは言うまでも無い。勿論、その言葉を発する龍宮の目が笑っていなかったのもまた、言うまでも無いことである。
 再び気分を落ち着かすためか、龍宮は深い息を吐いた。
「……付き合えるものなら、付き合いたいですよ……」
 弱弱しい声で、奥底にあった“本音”を呟く。
 何年もの間、自分の口から吐き出せなかった“感情”を。
「でも、無理なんです」
 同時に、望みを否定する。
「俺とお嬢はあくまで“護衛”と“護衛対象”、よくて“家族”。そういう関係を望んではならないんです。彼女は自分のことを異性として意識してないでしょうし、……告白なんてした日には、これまでの関係を崩してしまうんじゃないかと思えてしまって……。 ――怖いんです……っ」
 彼の独白に、樹島は耳を傾ける。
「でも……っ 自分の中の感情は、欲望は、日増しに膨らんでいるような気がして……! こんな具合に、夢にまで出てくるなんて……っ!!」
「お前さ」
「……?」
 遮る樹島の声に、龍宮は彼の方を見る。樹島は至極真剣な表情で龍宮を見ていた。

「もう、告白しちまえよ」

「…………は?」
 彼の口から出た言葉に、龍宮の思考は僅かに停止する。ようやく言葉の意味を理解したのか、龍宮の顔は一気に赤く染まった。
「!? な、な……何を言って……っ!??」
 一方、樹島の方はまだ真剣な表情を浮かべている。

挿絵

























「お前のは、単純に想いを抑圧してるから辛いってだけだ。だから一度本人に告白して、今まで溜めてたものを吐き出しちまえ。」
 「それに」樹島は付け加える。
「そんな事一つでギクシャクしてしまうような関係には、見えねぇしな」
 そう言って、彼はそのまま龍宮の前を去っていった。
 図書室の調査に戻った樹島に対して、彼は一言。
「――そう言ってもらえるだけでも、ありがたいです」
 言った後、彼は軽く礼をして、引き続き資料を探し始めた。


  * * * *

 粗方求めていた資料を探し終え、龍宮は撫子がいる研究室へ向かっていた。
(にしても……告白か……)
 正直苦い青春時代を送ってきた龍宮は当然そんな経験は無い。
 ゆえに、上手い事も何も言える自信は、無い。
(してしまったら最後、確実にこれまでの関係が壊れてしまう。それが怖かったから、俺はしなかった。でも、どれだけ抑え込もうとしても……感情は静まらない)
 研究室への歩みが、少しの間止まる。
 脳裏に過ぎるのは先程樹島の口から出た一言。

 ――『そんな事一つでギクシャクしてしまうような関係には、見えねぇしな』

「……よし」
 龍宮は自分の脇にある資料達を一瞥する。
 その目は、声は、どこか覚悟を固めたような意志が感じられた。


「お嬢、指示された資料を借りてきました。確認をお願いします」
 ガチャリというドアの音と共に、龍宮は撫子の研究室を訪れる。室内は適当な本棚とデスクとパソコンがあるというくらいで、比較的シンプルな内装をしている。当の彼女はカタカタとノートパソコンをキーボードを打っている。ディスプレイには恐らく研究論文の一部であろう文章が書き連ねられていた。
 彼に気付いたのか、撫子はキーボードを打つ手を止め、彼の方を振り返る。その顔は微笑を浮かべている。
「あら、おかえりなさい。それと、資料ありがとうございます」
 彼女はそう言ってから資料を受け取り、資料に目を通し始めた。
 資料の一つである専門書をパラパラとめくると、彼女は何かに気づく。それを確認すると龍宮はサイドテーブルへ向かい、お茶を淹れる支度を始めた。
 彼の目には入らなかったが、本を読んでいた撫子の口元は、わずかにほころんでいた。

  * * * *

 夜。大半の者は寮の自室でプライベートな時間を満喫している時間の中、龍宮は自分の部屋中をウロウロしていた。
「小型カメラ……無し、盗聴器……無し、覗き見してる者……無し。――ひとまずは安心か……」
 ふぅ、と一息ついて彼は自分のベッドの上に座り込む。今の彼の姿は普段の上着とネックレスが無い状態で、その挙動には、何処か緊張している節が見られた。
「色んな意味で自分の人生を左右することに茶々入れられたくないもんな……」
 彼がつぶやくと同時に、コンコンとノック音が部屋に届く。思わず肩がピクリと跳ね、心臓の音は早鐘となる。
「龍宮、入って良いですか?」
 扉越しに聞こえる撫子の声。
 彼女の声に安堵を覚えつつ、緊張を抑え、龍宮は努めて普段通りの調子で「どうぞ」と返した。ゆっくりと扉は開かれ、彼女は龍宮の前に姿を現す。淡い水色の浴衣を着ていた撫子は風呂上がりなのか、色白の肌は俄かに火照っており、腰まである長髪もしっとりしている。その姿には色っぽさがあり、龍宮は彼女の姿に釘づけになっていた。ハッとして平常心を取り戻そうと、数回かぶりを振る。
「珍しいですね、龍宮の方からお招きしてくださるなんて」
 「いつもは私の方が勝手に遊びに来ますのに」と言いながら、撫子は龍宮の隣に座る。
「こんなものまで用意するなんて」
 そう言って彼女は袖に収めていたものを彼に見せる。それは折りたたまれたメモ用紙で、龍宮の筆跡でこう書かれていた。

  今夜、話があります。
  寮の自室に来てください。  龍宮
  (追伸:中身は決して他の人に見せないようお願いします)

「何かあったのですか?」
「え、あ……その、…………」
 撫子の言葉に、龍宮は口ごもる。
 沈黙。二人の間に微妙な空気が流れ始めた。
 このままじゃ何も変わらない、そう思った龍宮は恐る恐る口を開く。
「――お嬢にとって、その、あっしは……どんな存在ですか?」
 龍宮の問いに対して撫子は、きょとんとした表情を浮かべる。
「え? ……大切な、“家族”……ですかね」
 『大切な“家族”』
 その回答は、彼の心に深く突き刺さる。
 あぁ、やっぱり。そう思い、龍宮は苦笑する。
「……“家族”、ですか……。……そう、ですよね。――やはり、こんな感情、抱く方が……おかしいですよね……」
「……龍宮?」
「お嬢、落ち着いて聞いてください」
 彼に何か言葉をかけようとした撫子の声を一言で遮り、龍宮は彼女の顔をまっすぐ見詰めた。
 鋭く、真剣な眼差しに撫子は目を見開く。
 とうとう、言うべき言葉が彼の口から出てきた。

「俺は貴方のことが好きです。……“家族”としてでなく、“一人の女性”として」

「え……?」
 撫子の表情に、朱が加わる。
 言った後、龍宮の顔はすぐ赤くなり、それ以降は彼女の顔を見まいと俯いて、まくしたてる。
「も……っ 勿論、所詮護衛でしかない俺が、護るべき存在の貴方に対して……このような感情を抱くのは筋違いだとは、解ってます! ……解っては、いるの……です、が――」
 彼の語りは此処で止まった。
 彼女がいきなり、彼の胸に、飛びついてきたから。
「――、……っ!? ??!」
 龍宮は何が起きたのか最初は判らなかった。だが、彼の思考回路は徐々に今の状況を認識し、時間差で彼の脈動は急加速する。
「な、な……な、お お嬢何して」
「――ようやく、言ってくださいましたね。龍宮……」
「はぃ?」
 撫子は龍宮の胸に耳を当て、心臓の音がどのくらい速くなっているのかを確認した後、彼の顔を見上げた。何処か艶のある、それでいて愛らしい笑みを浮かべながら彼女は言う。
「私も、龍宮のこと好きですよ? “護衛”として、“家族”として……」

「そして、それ以上に “一人の異性”として」

「……………え? え?? ――ってことは、つまり……え?」
「えぇ。好き合っていたのですよ? 私達」
「………ッ!!?」
 状況がうまく飲み込めていない龍宮に対し、撫子はとどめの一言を述べると、頬の赤身がますます濃くなった。途端に無口になるも、その腕は静かに彼女を抱きしめる。その顔も、緊張の糸がほぐれて安どの笑みが浮かべられている。

挿絵

























「――これで、晴れて私達は“恋人”になれますね」
 撫子の口から出た新たな関係に龍宮はドキッとするも、「そ、そうですね……」と返す。
「……でも、おやっさんや若達に何だか申し訳ないような……。……その、俺なんかで良いのだろうか、って……」
「ふふ、大丈夫。お父様も、お兄様も、組の方々も、きっと私達のことを祝福してくださるでしょう。」
 「結構寛大な方達ですから」と付け加えて、撫子は微笑む。龍宮は「寛大ではあるけど、それ以上に大雑把なだけなのでは……?」という考えがよぎるも、彼女のことを考えて口にはせず「そうですか」と安堵の言葉を返していく。
「……幸せ者ですね、私達……」
「……そうです、ね――」
 彼女と会話を交わす中で、龍宮は妙な気配を感じた。
 気配があるのは扉の向こう。閉めていたはずの扉にはわずかな隙間があり、その隙間越しに此方をうかがう複数の目。
「……………………」
 龍宮は静かに撫子から離れ、扉を勢いよく開け放つ。
 扉の向こうには比較的彼にとって見知った姿がちらほらと存在していた。
 佐守香登、ダーナ(とその保護者であるジーン)、佐久真宮埜(とコジョンドのオセ)、アスク・ラピウス。
「……何をしてるんだお前ら?」
 いやな汗が着実と背を伝っているのを感じながら、龍宮は尋ねる。
「あぁ、それはですね……」
 なぜかその問いに答えたのは、当事者である撫子であった。


 数時間前。
 撫子は娯楽のための小説を借りに図書室を訪れていた。手には、資料に挟まっていた龍宮のメモが握られており、非常に上機嫌なのが簡単に判るような笑顔である。
「えらくご機嫌だね」
 そう声をかけたのは、ライトノベルを借りて図書室から出ようとしていた香登であった。「はい、ご機嫌です」と撫子は満面の笑みを浮かべて正直に返す。
「何かあったの?」
「ありました。ですが、此方には他の人に見せてはならないみたいなことが書かれておりますので、見せません」
 そう言って撫子はメモで自分の口元を隠す。口元だけを隠しても、上機嫌であることが簡単に判るほどに彼女の周りにはお花が飛んでいる。
「へぇー……じゃあさ、何て書かれているのか読んでくれない?」
「読み聞かせですか? 解りました! えーと……」


「……って流れで、メモを読んで聞かせたらこうして人が集まったって具合でしょうねー」
(何てことをしやがるんですかお嬢……っ!)
 内心で龍宮は毒を吐きつつ、くず折れる。同時に、今まであまり気にならなかった羞恥心がせり上がりワナワナと身を震わせた。とりあえず香登の右手にはビデオカメラがあったので、それだけは力ずくで圧し折るという形で破壊する。
「――他のメンツはどういう流れで?」
「香登クンが『面白いものが見れるよ』って言われてね、ついてきた」
「ジーンの付き添いで」
「……こっちは止めようとしたんだけどね、止まらなくてさ……結果引きずられる形になったよ」
「『ご主人に同じく』」
「お姉さんのいる所には必ずオレが現れる!」
「最後の一言はいらんわ」
 ジーン、ダーナ、佐久真、オセ(……はホワイトボードに文字を書いて表現した)、アスクの順で各々の理由を述べていく。
 話を聞いていくうちに、龍宮には幸せなオーラが一転し、暗いオーラがのしかかる。
 それを払おうとして、撫子はポンと彼の肩を叩いた。ニコニコと笑みを浮かべたまま。
「いいじゃないですか。お父様達に報告の手紙を書くとしても、監視員の方にバレるわけですし。いつかバレるならば、今のうちにバラしておきましょうよ」
「お嬢……貴方のその妙なポジティブ精神を見ていると、『やっぱおやっさんの子なんだな』としみじみ思います……。」
 「あぁ……俺の人生を左右しかねないものを、面白半分の見世物にされるなんて……」龍宮は暗いオーラを背負ったまま、ブツブツとつぶやく。そんな彼の金髪を撫でながら、彼女はそっと耳元で囁いた。

「――告白していた時の龍宮、凄く格好良かったですよ……?」

「…………ッ!?」
 龍宮はバッと撫子の方に顔を向ける。
 彼女はいつも通りの笑みを浮かべ、いつもと同じ調子で言う。
「今は互いに望んでいた関係になれたことを、素直に喜びましょう?」


 こうして、ようやくモヤモヤしていた間柄を超えて、二人は晴れて恋人同士となることができました。

  おしまい

***********************************

 ようやく書き終わりました、龍宮の告白話。
 「いつかは書きたい」「いつかは書きたい」と思って早数ヶ月、ようやく形となりました。
 一つの記事でまとめようとして、この長さ。
 長いです、確実に携帯でもパソコンでも長いと感じるこの長さ。それに対して割に合わない終わり方に自分の文章力の無さが見事に感ぜられるという、ね……。申し訳ないです。
 ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。
 それからくずもち。様、狐笛様、奏出様。お子様をお借りいたしました、イメージ通りとなっているかは判りませんが、貸していただき誠にありがとうございます!



 次からは、おまけ達

おまけ1

























 「恋人関係になったんだから、名前で呼び合ってもいいよね」と思うも、しばらくはまだいつも通りの呼び方になるだろうなというのが簡単に予想出来るというね。
 龍宮がウブすぎるのか、撫子が積極的すぎるのか。謎です。


後日:紫黒組邸

おまけ2

























「やったぞ! ついにアオの奴やりやがった!!」
「お嬢が報われて何よりですね!」
「つーか今まで何で告らなかったんだー、って話だよな!」
「このまま流れに乗って結婚でもしてしまえ二人とも!!」
「いっそついでに跡取りを作ってくれればオレ別に結婚しなくても済むな!」
『色々と待ってください』(紫黒組組員一同)
 実家に報告したら、こんな具合で普通にお祭り騒ぎになります。


おまけ:ラスト

おまけ3

























 撫子が誕生日の時に、父親に花嫁衣装の自分を見せるべく結婚式の衣装を着て記念撮影する話みたいなのを考えたのだけど、告白話でこれだけの労力がかかったので誰かネタでも良いので描いてくださいと他力本願なつぶやきをば。

 お粗末さまでした。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[150] [149] [148] [147] [146] [139] [134] [133] [132] [131] [130]
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
小慶美(シャオチンメイ)
年齢:
34
性別:
女性
誕生日:
1990/03/09
職業:
一応学生
趣味:
色々
自己紹介:
幼い頃からの任●堂っ子。
闇の探検隊をプレイ中。
擬人化リクエストは消化しきれない。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone