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ポケダン(探検隊)チーム『シノギリハ』・『マシュマロ』・『ひだまり』・『カクテル』のネタを殴り書くそんなブログ。
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槐とユズリハの話

久しぶりに恋愛が絡むような気が



 *****
 大学に入って三度目の文化祭。
 見知った後輩であるユズリハが「じきに【グローカス・グループ】を統べる者として学ぶ価値がある」と言って、実行委員に加わり。毎年実行委員に立候補していた俺は、彼女を含め新たに入った実行委員達のサポートに回っていた。
 賑やかで、慌しくて、充実していた文化祭も無事に終わって、日の暮れた大学は後夜祭を執り行っていた。そんな時。
 頑張りをねぎらおうと飲み物を渡してみるも、疲労で彼女は封を切ることなくウトウトとしていた。そんな時。
「槐」
 俺の身体に身を預け、俺の名前を呼んだすぐ後に。

文化祭の思い出

























 とてもシンプルな一言が、俺の鼓膜を振るわせた。


 文化祭が終わって早数日。文化祭の忙しさがまるで嘘だったかのように、のんびりとした大学生活の中。
「――この件について、どういうことか説明を求めたいんだが」
「…………」
 11月6日の昼休み、棟の位置の所為かあまり人を見ない広間の片隅で。発言をした張本人を呼び出し、俺こと龍宮槐は真正面から聞いてみた。
 その右手には、その時の彼女の発言を記録し、その場で再生しているボイスレコーダーが一つ。
「……貴様の問いに答える前に、言いたい事がある」
 正面に立つユズリハのこめかみはピクピクと動きを見せ、その顔には一筋の汗が伝っている。
「貴様はっ 何をっ! 録音しているのだぁぁぁぁぁぁっ!!?」
 人気のない空間に響く、一つの怒号。ほんの数メートルという近距離にいた俺は反射で目を閉じて耳を押さえる。
「と、とととっ というか貴様ボイスレコーダーとか、そんなものを何故! け、けけ携帯して……」
「『疑われるのなら、それを覆すための証拠を
集める努力を怠るな』ってことでガキの頃から親父にボイスレコーダーを携帯するよう言われててさー…癖になってたんだよ」
 「後で後夜祭とかの記録を家で再生して思い出に浸るために様子を録音してたんだ」と付け加えると、ユズリハは不審な眼差しを俺に向けながら「貴様の父親は一体何をやってたんだ……?」と尋ねる。
 それについては「ただ人に誤解されてるだけだよ」と返答し、話は本題へ。
「……で、どうなんだ?」
 俺は問う。
 正面から来た問いに、ユズリハは動揺しているのか、顔を強張らせる。
「……それは、…………」
 かすかに漏れた声と、数秒の沈黙。
 沈黙の後、彼女の顔は覚悟を決めた真剣なものとなり。口は開かれ、言葉が紡がれていく。

「事実だ」

「私はお前を、一人の異性として、心惹かれ、“恋慕”している」
 「私はお前を、愛している」そこまで言い切られると、俺は今更ながら相手の言っている事を認識する。真剣で、それでいて頬を染めている彼女に対し、今自分は間抜けた表情を浮かべてるんだろうなと、どこか他人事のように感じていた。
「――っ 私にここまで言わせたのだ、貴様の返事を聞かせてもらおうじゃないか」
 ユズリハは此方を軽く睨めつけながら言う。そう言われたために腕を組み考える仕草をとってみる。
 だが、この場で出てくる答えというものはこの一つだけ。
「すまん、そんなすぐに答えは出ないわ」
「…………」
 「まぁ、貴様はそう言うだろうなと思ったさ」ユズリハは若干苦い表情を浮かべ、眉間に指を添える。その後に、“1”を意味するのであろう、人差し指のみをピッと伸ばし此方に見せながら
「一日猶予をくれてやる。明日、この時間この場所で私は貴様を待つから、そこで返事を寄越せ。良いな?」
「はぁ……」
 提案を言い終えたと同じ頃に、昼休みの終了と3限の始業を知らせるチャイムが鳴り響く。「絶対だからな!」と釘を刺すように言い捨て、ユズリハは俺の前から立ち去る。俺はただ呆然と、人気少ない広間の中、独りポツンと佇んでいた。



「ふ~ん…それで悩んでいたワケかい」
「ああ……」
 自分が履修していた今日の分の授業を終え、バイト先である喫茶【ラルメール】に来た俺は、いつもの調子で声をかけてきた店長のコルコに事の顛末を伝え、相談する。なお、その前に兄貴分である(と俺は認識している)ライカに相談の電話をしたが……ただ一言「リア充爆発しろ」と低い声で言われ通話を断たれた事を先にこの場で述べておく。
「軽くOKでもして付き合っちまえば良かったじゃないか。童貞卒業出来る良いチャンスだと思うがねぇ」
「相手が真剣に想っているなら此方も真剣に考える必要があるだろ。あと童貞言うな、事実だけど」
 先に言っておくが、現在はバイト中。場所は店内の厨房で、此方の手には食器と洗剤が付いたスポンジ一つ。会話しながらも俺は積み重なっている食器を次々と洗っていく。対してコルコは手馴れた調子で注文のあったデザートを盛り付けると、接客担当に渡す指示を出す。
「てか、前から思ったんだが何でアンタはすぐ……何つーの、こう……そっちの方向に思考を持っていくんだよ。そういうのは本来きちんとした交際を経て、結婚してから行うものじゃねぇのか?」
「今時そんなカップル無いに等しいとアタシは思うがね」
「その無いに等しいカップルの間に生まれたのが俺なんだけど」
「……本当にいるんだね、そんなプラトニックな恋愛しているのは」
 溜まった食器を洗い終えると、流れるように乾燥機に並べ扉を閉じ、乾燥機を起動させる。食器に熱風を送る音が自分の鼓膜を震わせた。
「アタシからも疑問を言わせてもらうけどさ、何でアンタはそんなに恋愛関係は若干消極的なんだい? それ以外に関しては結構自分から率先して考え行動するのに」
「――ただそういう事に縁が無かっただけだよ」
 先程の乾燥機とは別のそれが「乾燥を終えた」というアラームを鳴らし、俺は扉を開け乾いた食器を棚に並べていく。
 白色のマグカップにホットコーヒーを注ぎながらコルコは言う。
「本当にそれだけかい……?」
 彼女の問いに、自分の肩は僅かに反応を示す。
「……それだけだよ」
 彼女が注いだコーヒーを同色のソーサーに載せ、伝票が添えられたトレーの上に置き、俺はそれ片手に厨房を出た。
 誰にも聞こえない声量で、
「――俺は、恋愛とかそういうのをしちゃいけないんだよ」
 一言言葉を紡ぎながら。



 夜。本日のバイトを終え、帰宅した俺は明日の朝食の仕込みをし、風呂に入り、淹れたての緑茶をテーブルに置いて落ち着いていた。だが、その思考は今も返事の件について考えあぐねている。
「なかなか結論ってつかねぇもんだなぁ……」
 ため息つきながら一人ごちると、携帯がアラームを鳴らす。携帯に表示されているのは「母」という漢字一文字。
「オカンか」
『はい、お母さんですよー。元気にしてますか?』
 耳に届く、子供の頃から聞いていた母の声。彼女の傍に今妹の鳳梨もいるのだろうか、電話越しながらかすかに声が聞き取れる。
「ああ、元気にしてるよ。冬休みにまた元気な姿を見せれると良いな」
『ふふふ、楽しみにしておりますよ? 予定が解ったらちゃんと連絡してくださいね』
「もちろん。ちゃんとメールなり何なりするさ」
 何気ない会話が、しばらく続く。大学の事、日常の事、バイト先での出来事。様々な話題を語り、笑みを浮かべ聞いていた。穏やかに、時計の針は進んでいく。
「……そうだ、今親父は家にいるかな?」
『? ……ええ。あなたー、槐からお話があるようですよー』
 俺の言葉にオカンは何かを察したのだろうか、すぐに親父を呼び出す。かすかな足音の後に、聞こえてきたのは聞きなれた低い声。
『電話変わったぞ、どうしたんだ?』
「なぁ親父。親父って異性に告白された事って……あるか?」
『何だ藪から棒に。……誰かにされたのか』
「…………うん……」
 電話越しに、親父のため息が聞こえる。
『ちゃんと返事はするつもりなんだよな?』
「ああ……明日までに考えてと、彼女にも言われたよ」
『そうか。その人の事を、お前はどう思っていたか……それを俺に話せるか?』
「俺がユズリハ(そいつ)を、どう、思っていたか……そうだな」
 親父の言葉をきっかけに俺は、出会った時から遡って、今までの事をポツリポツリと言葉として紡ぎだす。
「最初は『護らなければ』って印象だったかな」
 出会いは彼女がチンピラに絡まれたのか、汗まみれだし、背中に切り傷あるし、ナイフを突きつけてくるヤツがいてそれは反射的に蹴飛ばして。家から近い場所だったから、そのまま家に連れて帰って、手当てして……女性だって事が判ったから重要な部分は管理人さんに頼んだけど。
 ああ、最初はそれで何か誤解されちまった……というか危うく斬りつけられそうになったんだよな。時々何も無い所から剣(?)を出してくるけど、アレどういう手品なんだろう。謎だ。聞いてみようとしてもそれについてははぐらかされるし。
 そんな出会いをしたからか、何か目が離せなくなったんだよな。大学などで遭遇したらつい視線そっちに向ける事もあったし、気付かれると睨まれるからこちらに目を向ける前に視線をそらすけど。
 周りはソイツのことを“完璧な人”と賞賛するけど、俺は素直にそう思えなかった。
「強気な姿を見せているけれど、硬い鎖で雁字搦めに縛られたガラス細工みたいな危うさを正直俺は感じていて。実際、その通りだった」
 春学期の成績を伝える通知が届いた日の事、足りない食材をいつもの店で買って家に戻る道中。
 雨が降る中、傘も差さず雨宿りもせず佇むアイツを見て。ほっとけなくて、声をかけた。
(――あれ?)
 彼女の言葉から出てくる“親”の姿に、あの時の俺はジワジワと怒りを覚えていった。
 アイツはアンタらのために、アンタらが語る“クスノキ”の存在に近づこうと努力しているのに。アンタらの理想のせいで、アイツはアイツを押し殺し続けているのに。
 血の繋がりも無い第三者の俺でもアイツの努力を評価出来るのに、何でアイツの努力を近くで見てきたアンタらは評価してやれないんだ。
 何で“ユズリハ”を見てやれないんだ。
(ちょっと待て、これじゃ、何か まるで……)
 アイツが自分に己の弱さを見せてくれた時、正直言うと嬉しかった。「傍にいて良い」と、認められた気がして。
「…………ッ!!」
 自分の右手で己の口を押さえる。振り返って、語って、初めて俺は自分が抱いていた感情の名前を理解した。
 最初は保護欲の類だと思っていたものの、本当の名前は
『……その様子だと、何かわかったようだな』
「ああ……」
『なら、それをそのままその人に伝えれば良い』
「――それは、出来ない……」
 俺の返答に、親父は多分キョトンとしているのだろう。若干沈黙が発生した。
『……何故?』
「その人は……結構なお嬢様で、いつかは家を支える存在になりたいと思ってるヤツで。――だけど、俺がいたら多分、その……ある種の“夢”っていうのかな? そういうのの……邪魔になってしまう気がして」
『…………』
「ソイツは気にしないかもしれないけど、ソイツの周りはそう思わないだろうから……だから」
『槐』
 聞き役に回っていた親父は、俺の名前を呼ぶ。低く、静かに呼ばれた俺は電話越しだけどわずかに肩がはねるのを感じた。
『“あそこ”の事を気にする必要は無い。血の繋がりは避けられないが、お前は別に“あそこ”と直接深い関わりは無いんだ。それを意識して自分の本音を無理に抑えなくて良いんだよ』
「! だけど……っ」
『いつかはバレる時は来るだろうが、その時は堂々と胸を張って言えば良いさ。「俺は“龍宮”槐だ」と』
「…………」
 数秒の沈黙の後に、電話から聞こえる声がまた変わる。
『……槐』
「オカン……?」
『お父さんも言いましたが、貴方自身は直接“あそこ”と関わりはございません。存分に青春を謳歌してくださいな』
「……わかった」
『ふふ、よろしい。……今度里帰りしてきた際に、その人の事をもっと聞かせてくださいね?』
「――ああ、わかったよ」
 言って、通話を切る。少しの間ぼうっと携帯を眺めて、俺は天井を仰ぎ、しばし思考を巡らす。
 自分の答えが、見えた気がした。



 翌日の昼休み、約束の場所に行くとそこにユズリハは立っていた。
「ちゃんと返事は考えてきたのであろうな?」
 軽く此方を睨めつけながら彼女は言う。
「ああ」
 俺は彼女の発言に肯定した後、自分の腕を伸ばし

 そっと、彼女の事を抱きしめた。

「?!! な……っ」
 ユズリハは突然の事に驚いて、こちらの顔を見る。自分を見る彼女の顔は耳まで真っ赤になっていて、思わず此方も綻ばせた。
 抱きしめたまま、俺は告白の返事を告げる。
「好きだよ」

「俺も、お前の事が 好き」


******************************

 自覚した、自分の感情

 ※ この日を境に、槐とユズリハは交際を始めます
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